寺子屋
勉強室
GPS
2000年06月18日 作成
2000年10月16日 修正

自動車のナビゲーションなどに使われている GPS をご存じでしょうか?
痴呆老人の位置を知るなど、福祉機器にも応用されはじめています。
●電波の速度で位置を知る
18個の人工衛星を飛ばします。 衛星には、ものすごく正確な時計を積んであります。 電波は1秒間に30万Km進みます。 人工衛星を出た電波が自分の所まで到達する時間を計ると、 人工衛星と自分の間の距離を知ることが出来ます。

一つの軌道に3個の衛星を飛ばすと地球上のほとんどの地域をカバーできます。 自分の位置を三次元で知るには、同時に3個の衛星と自分との距離を知る必要があります。 さらに時間を正確に知るため、1個の衛星が必要で、合計4個の衛星から同時に電波を受信します。

衛星が山や建物などの影になると電波を受信しづらい。 そこで6つの衛星が見えるように6つの軌道を設定しています。 3個×6軌道=合計18個となります。 各軌道には故障に備えて1個の予備の衛星を配置。 この結果、予備を含めた全部の衛星の数は24個で運用されています。

●誰が作ったの?  GPS:Grobal Positioning System
米軍が、巡航ミサイルを正確に目標へ到達させるために開発しました。 ピンポイントで目標を爆撃するためのシステムです。

湾岸戦争では、兵士一人一人に携帯型のGPSを持たせました。 知らない土地で、自分の位置を知る必要があったからです。 これがなければ知らない土地で、しかも目印の少ない砂漠の中では行動出来ません。 当時、携帯型GPSは1台100万円弱でした。 しかし、最近、自動車に積んでいるGPSは1台3万円ほどで製造され、実売価格も10万円以下になりました。

でも人工衛星を24個(運用中18個と予備6個→合計24個)も飛ばしている米軍は 2兆円以上のお金を使っています。 世界中の多くの利用者は、これをタダで使わせて貰っているんです。

●測量    有珠山噴火予知
北海道、有珠山の噴火を予知した事で有名になりました。 地上の位置を、誤差1センチ程度と極めて正確に知る事が出来るのです。 これにより山の高さや位置の微妙な変化を簡単に知ることが出来ます。 地震予知や噴火の予知に利用されています。

他にも様々な測量に幅広く利用されています。 トンネルを掘るときに、正確に掘り進む方向を測量しなければなりません。 山の反対側は見えませんので測量が難しかったのです。 GPSを使うと簡単に1cm程度の精度で測量ができるのでとても楽になりました。

大陸間の距離も正確に測ることが出来るため、ハワイが日本へ1年に 6センチずつ近づいていると言う事も確かめられました。 ハワイの火山が日本へぶつかって富士山が出来た、なぁんて面白い事実が 分かっていますよね?

●なぜ民間に開放されたの?
極めて高度な軍事用のシステムが民間でも使えるようになりました。 きっかけは、大韓航空機が、ソ連(当時)上空へ侵入して撃墜された事件だったと言われています。

従来、人工衛星や飛行機などは慣性航法と言われる方法で自分の位置を知っていました。 別名『ジャイロ航法』とも言われます。 ジャイロの決定的な欠点はスタート地点から自分が動いた分だけ積分して自分の位置を知るため、 スタート地点の情報を誤って入力すると途中で修正する事が出来ないのです。 さらに、ジャイロの誤差が積分されて大きな誤差になってゆきます。

GPSは絶対的な位置を知るため、ジャイロの誤差を積分しません。 スタート地点の情報設定も不要です。 大韓航空はスタート地点、または目的地のどちらかの設定を間違えたのではないか、と言われています。

このような悲劇を繰り返さないために利用を制限したうえで一般へ開示された、と言われています。 軍事用のシステムは数十センチですが、民間に開放されているデーターは200mほどの誤差を わざと入れて精度を落としています。 また、民生機器として市販されている機器はミサイルの速度に追いつけないもの、でなければ認められません。

●何に利用されているの?
飛行機 自動操縦装置の性能が飛躍的に向上しました。 成田からニューヨークへ飛ぶときの誤差は500m〜2kmだった。 それが1mの精度になった。 また、飛行機が空港に着陸した後、エプロン(人が乗り降りする所)まで誘導するのも楽になりました。
漁船の200海里問題に対応しやすくなりました。 逆に、密航船や麻薬の取引場所が正確にわかるため、悪い事にも利用されてしまいます。 北朝鮮の偵察艇が日本製(古野電気)のGPSを積んでいたのも有名ですよね? 釣り船が良く釣れる場所へ、正確に船を止めることが出来るようになった、と言う話もあります。
陸上 宅急便のトラックの位置、タクシーがどこにいるか、などを把握して、 効率的な配車が出来るようになりました。 でも、運転手が一休みしている様子を会社が把握できるようになったので、 タクシー運転手に嫌われていると言う話しもあります。
その他 登山者が自分の位置を知ることができるとか、 痴呆老人の首に掛けておくと、どこに居るか分かる(携帯電話と組み合わせておく)、 ペットにつけておく、など様々な用途が開発されています。
米国の
応用例
ストーカー犯罪を犯した犯罪者が、ストーカー行為を行った人の家に近づくと自動的に警報が発せられ、 近くの警察から警官が飛んでくるシステムが開発されたそうです。 この装置は犯罪者の足にはめられており、勝手にはずせないようになっているそうです。


米国へ持っていったSONY
の携帯型GPS装置です。
大陸間を移動した場合は
30分のイニシャライズが
必要なので、実用には供
しませんでした。
以上は、平成2年ころ、私がGPSの受信装置を設計していた頃の情報です。 最近これとは異なる情報があるかもしれません。従って転載をお断りします。
光(電波)の速度を修正:青野さん、コメントありがとうございました。(2000年10月16日)
米国での利用例を追加:新保さん、コメントありがとうございました。(2000年10月16日)

補足: シリコンバレーにGPS装置の専門メーカー『トリンブルナビゲーション』があります。湾岸戦争の時この会社のGPSを兵士一人一人が持っていた、と聞いています。トリンブル社の主任技術者はアジア系の方で、私が訪問した時、じっくり話を聞いて頂く事ができましたが、私の語学力では、なかなか意志を通じることが出来ませんでした。その後、日本のパイオニアが車載用のGPSを開発した時、トリンブル社の技術を導入して成功を収めました。また、トリンブル社は日本を訪問して市場調査をしていましたが、その時は彼らにお会いする機会を持てませんでした。また、この頃、SONYは独自の技術で携帯型のGPSを開発しました。今思えばどれもこれも懐かしい思い出、です。
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